0083の論文がRespiratory InvestigationにPublishされたってよ -Diagnostic Flowchart for Tuberculous Pleurisy, Pleural Infection, and Malignant Pleural Effusion-

こんにちわ、フローチャート大好き0083です。久しぶりの論文アクセプトされたのでその内容を解説いたします。

今回、アクセプトされた論文はこちら(doi: 10.1016/j.resinv.2023.11.005.)。

胸水の鑑別に役立つ指標は数多く報告されています。例えば胸水ADAの上昇が結核性胸膜炎の診断に有用と言われています。また胸水LDH/ADA比が結核と悪性胸水、肺炎随伴性胸水/膿胸の鑑別に有用であったり、胸水細胞分画で好中球優位は肺炎随伴性胸水/膿胸の診断に寄与します。他にも多数の指標が報告されていますが、それらをどのように組み合わせて使用すれば良いかという点については分かっていません。そこで当院で胸水穿刺を行った症例を後方視的に収集し、過去に報告された指標を用いて決定木により鑑別のためのフローチャートを作成しました。

2012年1月から2022年10月の間に胸水穿刺を行い診断に至った958例(結核性胸膜炎174例、肺炎随伴性胸水/膿胸215例、悪性胸水360例、その他209例)について、過去に胸水の診断に有用と報告された指標(胸水ADA≥40 IU/L、胸水LDH<825 IU/L、胸水LDH/ADA<15、胸水ADA/TP<14、胸水中好中球優位または細胞変性あり、胸水アミラーゼ≥75 U/L、血清WBC≥9,200/µLまたはCRP≥12 mg/dL、気胸あり)について決定木を用いてフローチャートを作成しました。

そしてできたフローチャートがこちらです。

※TB 結核性胸膜炎、PI 肺炎随伴性胸水/膿胸、MPE 悪性胸水

4疾患に対する診断精度は71.7%であり、結核性胸膜炎の診断に対する感度は79.3%、陽性的中率は83.2%、肺炎随伴性胸水/膿胸の診断に対する感度は75.8%、陽性的中率は83.2%、悪性胸水の診断に対する感度は88.6%、陽性的中率は68.8%、その他の診断に対する感度は33.0%、陽性的中率は60.0%でした。

診断失敗率は、結核性胸膜炎で4.6%(n=36/775)、肺炎随伴性胸水/膿胸で6.8%(n=52/762)、悪性胸水で8.3%(n=41/494)、その他の疾患で16.6%(n=140/843)でした。

※診断失敗率は、例えば結核性胸膜炎であれば、フローチャートで結核以外の疾患に分類された時に結核であった率です(診断失敗率=[結核以外に分類された結核の患者数]/[結核以外に分類された全患者数])。

このフローチャートに含まれる項目は全て胸水採取時にルーチンで行う検査であり、精査の初段階での指標として使えます。胸水精査の特に結核性胸膜炎、肺炎随伴性胸水/膿胸、悪性胸水の感度と診断失敗率が低く、これは、フローチャートによって結核性胸膜炎、肺炎随伴性胸水/膿胸、または悪性胸水の診断が得られた場合、他の 2 つの疾患の可能性が低いことが示唆されます。

また診断失敗した症例がどのグループに分類されたかも参考になるかと思います。

ぜひ臨床の現場で使用してみてください!

   

ちなみにADA≥40U/Lの症例に対しては↓のフローチャートで結核性胸膜炎の診断率を挙げられます!

診断精度80.9%、感度78.8%、特異度82.9%

Shimoda M et al, BMC Pulm Med . 2022 Sep 21;22(1):359.より