肺NTM症の化学療法(治療)に関する見解 の改訂版が発出されました

レセプト解析による3剤併用療法の継続期間は6か月約60%、12か月約40%でした。これは、許容できるものではない、というのが基本的なスタンスです。特に副作用に関する問題をクリアするためにいくつかのポイントがあります。

i① 非空洞のNB型では連日療法と週3回療法どちらも認められている点

② 3剤を基本としつつも、状況によってマクロライド+EBを許容している点

③ EBの減量に言及している点

この3つで柔軟に対応して、標準治療の継続期間を改善していくことが重要です。

つまり、NC-NBでは、3剤連日、3剤週3回、および2剤(マクロライド+EB)の3つの選択肢があるわけです。

様々ご意見を聞かせていただければ幸いです。

追加のコメントはまた書きたいと思います。

また本日から研究所加藤先生が会長を務める総会が開催されます。

慶長先生が執筆された、線毛機能不全症候群の診断に関するコメンタリーがJournal of Human Genetics にPublishされました。

PCDの遺伝子診断はこの10年でシークエンス技術の進歩によって大きく発展しました。
しかし、遺伝子検査もPCD全体の70-80%程度と言われており、鼻腔NO、
電子顕微鏡検査などとの組み合わせで総合的に診断されています。
現時点でのUp to Date および問題点を含めてまとめられています。

現在無料ダウンロードが可能なので、ご一読ください。

https://www.nature.com/articles/s10038-023-01166-w

0083の論文がJournal of Infection and Chemotherapyにpublishしたよ -Characteristics of Pleural Effusion due to Paradoxical Response in Patients with Pulmonary Tuberculosis-

こんにちわ、0083です。

またまた論文が掲載されましたので紹介です。

今回の論文は結核性胸膜炎の初期悪化(パラドキシカルレスポンス:paradoxycal response)についての研究です。(doi: 10.1016/j.jiac.2023.05.019.)

結核治療中に適切な治療ができているはずが、胸水増多など一過性に病状が悪化するパラドキシカルレスポンスという現象が見られることがあります。これは結核菌による過敏反応であり、治療の失敗ではありません。一般的には自然軽快しますが、一部の症例ではステロイド治療やドレナージを要します。

しかしパラドキシカルレスポンスによる胸水の特徴は示されておらず、またどのような症例にステロイドやドレナージを要するかは不明です。

そこで26例のパラドキシカルレスポンスと184例の結核性胸膜炎を比較しました。

   

パラドキシカルレスポンスの胸水では胸水中LDH値が低く(中央値 177 IU/L vs. 383 IU/L, p<0.001)、胸水中の糖が高かった(中央値 122 mg/dL vs. 93 mg/dL, p<0.001) 。

しかし胸水ADA値は差がなく、パラドキシカルレスポンスの胸水も結核性胸膜炎と似たデータになると考えられます。

→結核治療中に出現した胸水が結核性胸膜炎のデータに矛盾がなければパラドキシカルレスポンスの可能性が高いと言えます。

結核性胸膜炎の胸水は結核菌による免疫応答が原因と言われていますが、パラドキシカルレスポンスも同様の機序が関係していると言われているため、胸水ADAが高いのは矛盾しないと考えられます。

   

さらにパラドキシカルレスポンスの症例を複数回の穿刺やステロイド治療を要した群(治療群:n=9)と自然軽快した 群(非治療群:n=17)に分けて検討しました。

その結果、治療群では結核治療開始からパラドキシカルレスポンス出現までの期間が速かったことが分かりました(中央値 19.0 days [IQR: 18.0–22.0] vs. 37.0 days [IQR: 28.0–58.0], p=0.012)。

→結核治療を開始後、3週間以内に急速に胸水貯留が出現した場合、治療介入が必要になる傾向にありました。

   

この論文は超有名ブログ「呼吸器内科医」でも取り上げていただきました。

てゆーか今日Publishのはずなのに著者よりも早く記事にするなんて、、、凄すぎます!

土方先生筆頭の、線毛機能不全症候群の診断に関する論文がAJRCMBにpublishされました。

PCDの遺伝子診断で用いられるゲノムシーケンスは、臨床的意義不明なバリアントの解釈や構造変異の検出が困難であるなどの限界があります。これに対して、RNAシーケンス(RNA-seq)は、異常な遺伝子発現やスプライシングイベントを特定するための有用な手法です。
今回、鼻粘膜生検検体を使って、RNA-seq解析を加えることで、図のCCDC40の症例を含め4例のaberrant splicingを同定することができています。診断精度の向上は、とても重要な進歩であり、評価されたのだと思います。土方先生、慶長先生ら、生体防御部の先生が中心になっています。

0083の論文がRespiratory InvestigationにPublishされたってよ -Relationship between the Thickness of Erector Spinae Muscles and Mortality in Patients with Pulmonary Tuberculosis-

こんにちわ、0083です。

今回アクセプトされたのは結核の予後と筋肉の厚さの関係を解析した論文です。

https://doi.org/10.1016/j.resinv.2023.04.011

以前、Th12レベルの脊柱起立筋の厚さ(ESMT)が面積(ESMCSA)と相関し、ADLの評価として簡便な方法であることを報告しました。

今回の論文は筋肉の厚み(ESMT)と肺結核の予後との相関を検討しました。

267例の結核の症例を収集し、そのうち40名が60日以内死亡していました。

結核症例においてもESMTとESMCSAは強く相関し(r=0.991, p<0.001)、多変量解析を行ったところ、ESMTの低下は有意に60日死亡率の上昇を認めました(HR 0.870 [95%Cl 0.795-0.952], p=0.003)。

さらにROC曲線を用いて決定したESMTのカットオフ値(19.1mm)でカプランマイヤー曲線を作成しました。

御覧の通り、ESMT≤19.1mmの群で有意に予後が悪い結果でした(log-rank test p<0.001, HR 6.48 [95%Cl 2.98-14.05])。

筋肉の厚みの測定は筋肉量の評価として簡便な方法であり非常に有用であることに加え、その予後にも関係している事が示されました。

定例の勉強会が開催されました

Web含めて13人ほどの参加です。基礎、臨床6名が発表しましたが、新しいプロジェクトも良い感じで進んでいるようです。あっという間の3時間でした。

今月号の表紙です!

”キタコレ”って思わず書いてしまった。

いいですねー。この写真!

もしかして0083が絡んでいるのか、と思いましたが違いました。

撮影:関健太郎氏

「夕やけお空の外に出たい

などから差し込む夕日が眩しくなったころ、シールぼうややが言いました。

外には、オレンジ色の空が静かに広がっていました。

「この空を見せたい。今は働いている、おねえさんたちに見せたい。

だから写真を撮って、」とシールぼうやが言いました。

結核のない明日を見据え、その日がくるのを決してあきらめない。

固い決意がシールぼうやには見えました。

米国患者団体会長のAmyさんに、市民公開講座での講演のお礼を伝えました。

ワシントンで開催されたATSでは、久しぶりにAmyさんに直接お会いすることができました。

市民公開講座での講演の反響は大きく、多くの患者さんに観て頂いております。今回は、そのお礼を伝えることができました。

その向かいには、PCD(線毛機能不全症候群)の患者団体がブースを開いていました。ぜひ活動を日本でも伝えてくださいと話されていました。