先日紹介頂きました、肺MAC症マウスモデルの論文についての紹介になります。
この研究は、複十字病院、結核研究所に所属し、長崎大学の大学院生として行いました。
歴史的に、MAC感染マウスモデルは、beige mouseなどの免疫不全マウスに対して経静脈的に感染させた、播種性の病態を強く反映しているモデルが主でした。しかし、このモデルは、近年問題となっている基礎疾患のないNB型肺MAC症の病態とは大きく異なると考えられるため、最近は免疫不全のないマウスを経気道的に感染させたモデルの報告が増えてきています。
NTM感染マウスモデルを構築する際の大きな問題は、NTMが結核菌より毒性がかなり低く、また菌株による毒性・遺伝学的な差が大きいため、免疫不全のないマウスに持続的な感染を起こすことが難しいことが挙げられます。そのため、今回はこの問題を克服するべく、菌株選択の新しいシステムを構築しました。
https://journals.asm.org/doi/10.1128/spectrum.00451-22

また、今回、この研究を遂行する中で、様々な気付きを得ることができましたので、今後は、ヒトの病態へとつながるような、より発展的な内容へと展開していければと思います!
以下、論文の内容になります。簡単な流れは下のポスターも参考にしてください。
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ヒトの肺 Mycobacterium avium complex (MAC) 症を反映したマウスモデルの構築は、病態の理解に重要である。一般的にMACは結核菌よりも毒性が低く、遺伝学的な、および毒性の多様性が大きいため、持続的な感染を引き起こすためには、適切な菌株の選択が重要である。そのため、本研究では、肺MAC症マウスモデルの構築のために、免疫不全のないマウスにおいて高い病原性を示す菌株を選択するシステム開発を行った。
まず、BALB/cマウスに、臨床分離株由来で全ゲノム配列が解読されている日本における代表的な系統株であるMycobacterium avium subsp. hominissuis (MAH) strain OCU901sを106CFU経鼻感染させたが、持続的な感染を引き起こさなかった。
次に、マウスに病原性を示すMAC菌株をスクリーニングするため、複十字病院に通院中の進行性の肺MAC症患者からMAC菌9株(MAH 7株、M. intracellulare 2株)を抽出した。これら9株を2群に分け、それぞれの群において菌株を混合しBALB/cマウスに経鼻感染させた。その結果、両群において感染12週後において広範な気管支周囲の肉芽腫が形成され、マウスにおいて高い病原性を示す菌株が両群に含まれていることが示唆された。
次に、肺内菌数の変化は、感染前後のそれぞれの菌株に特徴的な一塩基変化(SNV)の変化によって表すことができると仮定した。この仮説に基づいて、感染12週後の感染肺から抽出した菌DNAにおいて、それぞれの菌株特異的なSNVを同定・定量化したところ(Quant TB(BMC Genomics 2020)にて定量化)、感染肺から4株(MAH 2株、M. intracelllare 2株)のみが検出された。この結果と一致して、臨床分離株9株を個別に感染させたところ、SNV解析で同定した4株のみにおいて、高い肺内菌数が維持され、広範な気管支周囲の肉芽腫が形成されたが、他5株は持続的な感染を誘導するに至らなかった。
本研究において、MACの混合感染と全ゲノム解析を組み合わせることで、マウスモデル構築に適した、病原性の高い菌株を効率良く同定する方法が開発できた。本方法は肺MAC症マウスモデル構築および、さらなる病態へと迫る研究を促進する。
ATS2022 ポスター





