より良いNTM診療のために。ATS/ERS/ECSMID/IDSA Clinical Practice Guideline について アミノグリコシドについて

「V: 肺MAC症患者では、注射剤のアミカシンあるいはストレプトマイシン含有レジメン、または注射剤のアミカシンあるいはストレプトマイシン非含有レジメンで治療すべきか?
1.空洞あるいは進行性/重症気管支拡張症あるいはマクロライド耐性肺MAC症の患者では、注射剤のアミカシンあるいはストレプトマイシンを初期治療レジメンに加えるべきである(条件付き推奨)。」

様々批判はありますが、個人的に2007 ATS/IDSA statementは好きですし、何度も読んで勉強しました。本当にGriffith, Wallaceはじめ著者らは凄いと思います。しかし、ページ数が多く、ガイドラインとして広く臨床医に読んでもらうには難しい内容だったかもしれません。

今回のガイドラインで病型のFibrocavitaryという用語が殆ど使われなくなりましたね。そもそもNTMの病型は、画像分類でシンプルに分けられているようでいて難しいです。その定義は誰がどこにいつ書いたのが始まりなのでしょうか。よくわからないけど便利であるために知らない間に広がっていたというのが現状なのかもしれません。

因みに2007年ATS/IDSA satementにはFCを

(1) thinwalled cavities with less surrounding parenchymal opacity, (2) less bronchogenic but more contiguous spread of disease, and (3) to produce more marked involvement of pleura over the involved areas of the lungs

最近の論文には Respir Med. 2019 May;151:1-7. doi: 10.1016/j.rmed.2019.03.014. The fibrocavitary form is characterized by cavitary lesions that occur predominantly in the upper lobes and usually develops in older males with underlying lung diseaseと書かれています。

今回ガイドラインから、空洞型か否かが強調されるようになっています。これは、NB型でも空洞を有するとFC型とされていたものと同程度の治療反応性、予後であることが分かったことによります。Outcomes of Mycobacterium avium complex lung disease based on clinical phenotype Eur Respir J. 2017 Sep 27;50(3):1602503. doi: 10.1183/13993003.02503-2016.

空洞があり、塗抹陽性であれば治療を開始しましょう、というのがPICOの一番だったと思います。

そして、アミノグリコシドについては、小橋先生のStudyなどを引用してその有効性を示し、空洞例(さらに進行性/重症気管支拡張症あるいはマクロライド耐性肺MAC症)であれば初回から使いましょう、ということが強調されています。

コメント:

1.ガイドラインにはSmとAMKの比較したデータはないと記載されています。血中濃度測定可能であること、やせ型の女性にも比較的長期投与が可能であること、Smは使用終了後も聴力低下が進行することがあること(結核での経験)などから当院ではほぼAMKを使用しています。

2.進行性/重症気管支拡張症 の定義は記載されていません。NICEスコアやReiffスコアが有用である可能性はありますが、臨床では塗抹検査や症状と併せて考えるのが良いのかもしれません。

3.気管支拡張メインの症例では、一般細菌の検査は必ず行うべきと思っています。H. influenzaeやP. aeruginosaなどの一般細菌が症状の原因であることもあります。1週間ほどの内服抗生剤で症状が改善することは稀ではありません。

4. CAM耐性菌のデータはGriffithのデータに加えて当院も関係したデータが繰り返し引用されていています(有難いことです)。韓国のデータは手術のみが有用であったと結論していますが、術前菌量を減らすため、また残存病変を考慮すると長期AMKは必須と考えています。

Griffith DE, et al. Clinical and molecular analysis of macrolide resistance in Mycobacterium avium complex lung disease. Am J Respir Crit Care Med 2006; 174:928–34. 17.

Morimoto K,  et al; Nontuberculous Mycobacteriosis Japan Research Consortium. Macrolide-resistant Mycobacterium avium complex lung disease: analysis of 102 consecutive cases. Ann Am Thorac Soc 2016; 13:1904–11.

  1. AMK使用時には他の薬剤を併用しましょう、と記載されています。その中にpossiblyとしながらもClofazimineが記載されているのには少し驚きました。Amikacin must be paired with adequate companion medications, such as a macrolide, ethambutol and possibly rifampicin and clofazimine, to prevent the emergence of acquired mutational resistance and predictable treatment failure.

6.アミノグリコシドの投与期間ですがAdministration of at least 2–3  months of an aminoglycoside was considered the best balance between risks and benefits.と2-3か月と明記されています。しかし、ガイドランのレビュー期間後にAssociation Between Duration of Aminoglycoside Treatment and Outcome of Cavitary Mycobacterium avium Complex Lung Disease. Clin Infect Dis. 2019 May 17;68(11):1870-1876. doi: 10.1093/cid/ciy804. という論文で3か月以上のほうが成績が良いというデータが示されています。

話は外れますがアミノグリコシドにはカナマイシンがあって、近年は使用頻度が減ってしまいましたが梅澤先生や京都大学久世教授の話は耳学問で学んでおりました。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A2%85%E6%BE%A4%E7%B4%94%E5%A4%AB https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/152965/1/dept2_chap17.pdf

図はvhttps://yakugaku-gokaku.com/post-986/から