より良いNTM診療のために。ATS/ERS/ECSMID/IDSA Clinical Practice Guideline について 2剤vs3剤

「VII: マクロライド感受性肺MAC症患者では、3剤あるいは2剤のマクロライド含有レジメンを使用すべきか?
1.マクロライド感受性肺MAC症患者では、2剤(マクロライド、エタンブトール)よりも少なくとも3剤(マクロライド、エタンブトールを含む)を用いた治療を支持する(条件付き推奨)。」

本邦から発信された治療に関係する研究の中で、以下の3つの論文は世界的に評価されております。

  1. Tanaka E, et al. Effect of clarithromycin regimen for Mycobacterium avium complex pulmonary disease. Am J Respir Crit Care Med. 1999 Sep;160(3):866-72. doi:10.1164/ajrccm.160.3.9811086.

当時世界的にテキサスのWallaceらと同等の研究を行うことが出来たのは京大グループだったでしょう。現在の標準治療はテキサスグループが確立したとされていますが、ほぼ同時期に田中らが同様の研究をおこなっていました。研究開始時期はどちらも1992年ですが、症例数が多かったWallaceらが1996年に発表、翌年にガイドラインで推奨しています。

  1. Kobashi Y et al. double-blind randomized study of aminoglycoside infusion with combined therapy for pulmonary Mycobacterium avium complex diseaseRespir Med. 2007 Jan;101(1):130-8. doi: 10.1016/j.rmed. 2006.04.002. Epub 2006 Jun 5.

誰もが知る、SmのStudy。2007年ステートメントには未解決の問題7つが挙げられていますが、その1つを前向き試験で解決してしまったのがこの研究です(しかも発表年が同じ)。もう少しハイインパクトの雑誌でも、、と思ってしまうくらい有名です。学会では、何回か海外の医師に小橋先生を紹介してくれと頼まれました笑。

  1. MIwa S, et al.Efficacy of clarithromycin and ethambutol for Mycobacterium avium complex pulmonary disease. A preliminary studyAnn Am Thorac Soc. 2014 Jan;11(1):23-9. doi: 10.1513/AnnalsATS.201308-266OC.

そして、残り未解決問題の1つである2剤対3剤を前向き試験で比較したのがこちらになります。

正に7つの疑問の一つの答えを求めたStudyでしたが、ガイドラインでは逸脱数が多かったこと、CAMの投与量の低さなどのLimitationを挙げ、さらに、よく知られたHIVの播種性MAC症のデータを挙げ(CAM耐性率が3剤で低かった)耐性のデータが出るまでは3剤治療を推奨する、としています。

個人的にはRFPが相互作用で使えない時、副作用が起こった時は非空洞例であればそのまま2剤としていますが、差異を感じた、失敗した記憶はありません。レトロの解析では下記のデータがありますが、こちらも差はなさそうですね。

Role of ethambutol and rifampicin in the treatment of Mycobacterium avium complex pulmonary disease BMC Pulm Med. 2019 Nov 11;19(1):212. doi: 10.1186/s12890-019-0982-8.

実はMiwa先生らのグループは、耐性に関するデータを最近出しています。

Ito Y, et al.Macrolide resistant Mycobacterium avium complex pulmonary disease following clarithromycin and ethambutol combination therapy.Respir Med. 2020 Aug;169:106025. doi: 10.1016/j.rmed.2020.106025. Epub 2020 May 15.

コメント:

マクロライド+EB2剤は魅力的ではありますが、非空洞NB型の話であればTIWでEBの副作用頻度を減らせますので、今はまず非空洞NB型に3剤のTIWを根付かせること!!だと思います。

それ以外の空洞、進行NBについては2剤+アミノグリコシド併用導入を含めて検討の余地があるのではないかと思います。

注意)現在米国では3剤と2剤の比較試験が行われていますが、目的はNB型で3剤TIWと2剤TIWの比較です。これのデータでTIWでRFPを抜けるか、という判断ができることになりますね。