X: リファンピシン感受性肺M. kansasii症の患者では、イソニアジド含有レジメンで治療すべきか?あるいはマクロライド含有レジメンで治療すべきか?
1.リファンピシン感受性肺M. kansasii症の患者では、リファンピシン、エタンブトールに加えて、イソニアジドまたはマクロライドのどちらを併用するべきか。
新しいガイドラインでは古典的なINH+RFP+EBの3剤治療に加えて、マクロライド+RFP+EBの3剤治療併用のどちらも推奨しています(基本的にMACと同じ治療ということですね)=「リファンピシン感受性肺M. kansasii症の患者では、リファンピシン、エタンブトールに加えて、イソニアジドまたはマクロライドのいずれかの併用を支持する」
これは、RFPがキードラッグであるM. kansasii症は、INH併用でもマクロライド併用でも治ってしまうから当然と思います。日本では、INHは保険収載されていない中で使用されてきたので、システム的にはマクロライド併用療法が好まれていく流れになると思います。
ポイントは、RFPの用量です。MAC治療ではRFPの存在価値が疑われている状況ですので、副作用を懸念してRFP300mgへ減量して使用している先生もいらっしゃると思います。しかし、M. kansasii症ではしっかりと10mg/kg投与しないと、治療反応性は乏しくなります。
これまでに何例か、M. kansasii難治例を診療しましたが、RFP増量で改善した症例を経験しています。特に身体の大きい男性などでは投与量を間違わないほうに注意が必要です。
話題が逸れますが、、
1980年前後の論文ですと、M. kansasii患者が全体の20%を占めるという報告もありますが、2014年の全国調査では3-4%であり、2012年ごろの大手検査会社の抗酸菌データ解析でも同様の傾向でした。当院では、2014ころからMABCの割合が増えてきており、MACも増え続けているために、M. kansasiiは実数としては減っていないものの肺NTM症全体に占める割合は減っています(Respir Med. 2019)。
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ガイドラインに戻ってもう一つ
XI: リファンピシン感受性肺M. kansasii症の患者では、注射剤のアミカシンあるいはストレプトマイシンを治療レジメンに加えるべきか?
→ 肺M. kansasii症の患者では、ルーチンに注射剤のアミカシンあるいはストレプトマイシンの使用することを支持しない(強い推奨)
空洞病変があるとMAC症ですとアミノグリコシドの追加を推奨していますが、M. kansasii症では結核と同様に内服薬のみで浄化空洞となりますのでアミノグリコシドは不要になります。過去の論文では、追加投与により陰性化が早くなるようですが、内服だけでも陰性化率は変わらないようです。