より良いNTM診療のために ATS/ERS/ECSMID/IDSA Clinical Practice Guideline について M. kansasii症 にフルオロキノロンを使うか

XII: リファンピシン感受性肺M. kansasii症の患者では、フルオロキノロン含有レジメンで治療すべきか?あるいはフルオロキノロン非含有レジメンで治療すべきか?

1.リファンピシン感受性肺M. kansasii症の患者では、リファンピシン、エタンブトールに加えて、フルオロキノロンのかわりにイソニアジドあるいはマクロライドを含めた治療レジメンを使用することを支持する(条件付き推奨)。
2.リファンピシン耐性肺M. kansasii症あるいはファーストラインの治療に忍容性がない患者では、フルオロキノロン(モキシフロキサシンなど)をセカンドラインの治療レジメンとして使用することを支持する(条件付き推奨)。

コメントの前にNTMのコロニーの写真とラニオン分類の表を添付してあります。

培地に生えた菌 コロニーの性状が違うのが分かります。M. kansasiiは光発色菌です。先日藤原先生の論文に出てきたM. europaeumもⅠ群菌でした。Ⅱ群菌は目立ちますね。

ずっと昔、全国から菌を集めて頻度の高い菌は何か調べたときにⅠ群菌とⅡ群菌が多く出たそうです。おそらく色が目立つからⅢ群菌(MACなので一番多く出るはず)が過小評価されてしまったのでは、、という話を聞いたことがあります(遺伝子検査などが無い時代の話です)。

ガイドラインの話に戻ります。

要するに、一次治療はCAM+RFP+EBまたはINH+RFP+EBのどちらかで、アミノグリコシドの追加は不要だし、フルオロキノロンへ何かを変更する必要もない、というのが基本的スタンスになります。

以前書いたように日本にはRFP耐性M. kansasii症は滅多に遭遇しないので(最近の論文ではブラジルとか結核高蔓延国では比較的頻度が高いようです)、フルオロキノロンの出番は一次治療で忍容性がない患者になります。

RFPが副作用で使えない時ですが、フルオロキノロンへの変更のみで充分な効果があるかは分かりません。自分であればINH+RFP+EBで治療している状況であれば、RFPからフルオロキノロンへの変更に加えて、INHもマクロライドに変更すると思います(マクロライド+フルオロキノロン+EB)。これで治療反応ば乏しければアミノグリコシドを考慮、、でしょうか。いずれにしてもエビデンスは乏しいので陰性化までは注意してフォローが重要と思います。

以前、結核についてですが、RFPが副作用で使えない患者さんにRBTを投与した症例をまとめたことがあります(Kekkaku Vol. 88, No. 8 : 625_628, 2013、、懐かしい)。下に要旨を添付しますが、結論としてはRFPが副作用で使えない症例でもRBTスイッチで充分に治療ができた、というものです。おそらくRBTはRFPと同等の効果があると思いますので、RBTが使えるようであれば上記のような複雑なことはしなくても良いかもしれません。しかし、マクロライドとRBT併用ではRBT血中濃度が上昇してブドウ膜炎や消化器症状の副作用が顕著に出ますので、マクロライドは併用しないでしょう(MAC症治療ではRBTとCAMとの併用を長期投与できた経験はないです)

ということで皆さん殆ど経験しない状況について、私見を述べました。

関係ないですが

https://pulmonary.exblog.jp/

倉原先生のブログ(書籍もですが)は日本の呼吸器科全体のレベル維持に貢献していると思います。存在を知らない呼吸器科医はモグリに認定しようかと思っています笑。