最も多く読まれた記事は0083による「胸水の色には理由がある!」でした。

本年は、コロナを病院全体で取り組みつつ、各活動を可能な範囲で続けてきた1年でした。

本ブログが0083の力が存分に発揮される場となり嬉しい限りです。2番目も小三Jで0083でした(凄い、、個人的には「てべ猫」の活躍を期待)。最近の研究アウトプットペースにも驚かされます。その他、古内先生のCHESTアクセプト、その他NTM関連で、東郷先生、藤原先生、白井先生、松田先生のPublishは嬉しいニュースでした。大澤先生や竹内先生論文は特に嬉しかったですし、吉山先生のNatureには腰を抜かしました。MDDの会は、田中医師が中心となり、ZOOM開催を順調に続けています。企業バックアップの症例提示は困難になっている中で、自前でMDDの会をさらに発展出来ればと期待しています。日赤医療センター、JR総合など他施設の先生方引き続きよろしくお願いします。新規参加希望ありましたらご連絡ください。

当院は私含めベテラン勢がやや多いですが、今年は若手(中堅)の活躍が目覚ましかったです。研究所や他施設との共同研究も継続的発展が見込まれておりさらに基盤強化を図っていくことになっています。びまん性肺疾患、喘息、COPD、肺癌など症例が豊富ですので(勿論抗酸菌や真菌など慢性感染症も)、どの分野をやりたい人でもフィールドとしては申し分ありません。若手の先生方、是非見学へ来てください。

PCD(原発性線毛機能不全症候群) Awareness Monthは10月ですが、日本では毎日です!是非共有といいね!をお願いします。

子供のころから慢性副鼻腔炎を患っている(治りにくいと言われている方)

小児喘息と言われていたが、黄色い痰が続いている

咳痰が季節性なくある

肺炎を子供のころから複数回罹患している

マクロライド(クラリスロマイシン、エリスロマイシン)を長期に処方されているが改善が乏しい

内臓逆位があると言われている

不妊治療歴のある

PCD患者さんの多くは未診断であり、長期通院を余儀なくされているのに、徐々に肺機能は低下し、中には酸素療法を必要とする方もいます。特効薬が無い状況にもかかわらず、未だ難病認定されておらず充分なケアが受けられてません。

第一に、正しく診断し呼吸器専門医の診療する体制を作る必要があります(特効薬が無くとも、診断そのものが正しい管理へと繋がり、肺機能の維持、予後の改善に繋がります)。呼吸理学療法の介入も重要なポイントです。耳鼻科、呼吸器科、小児科、婦人科に通院している患者さんで、上記のどれかに当てはまる患者さんがいたらPCDを疑いましょう。

そして、この疾患の認知度を上げていくことが目標です。

海外の情報と異なり、日本(アジア)特有の疾患phenotypeがある可能性が高いです。特に内臓逆位は乏しい可能性があり(内臓逆位が無い症例のほうが多い)、副鼻腔気管支症候群ではPCDの鑑別は必須です。

胸腔穿刺の安全性についての検討

完璧でない自分に心を痛め繰り返す絶望に心が折れそうになるけど、それでも拳を突き立て体を引きずり顔を上げ高みを目指して手を伸ばし続ける皆様、こんにちわ。0083です。

今日は冬の自由研究を発表させていただきたいと思います。

   

胸腔穿刺の安全性についての検討

【目的】

胸腔穿刺は胸水の採取を行う際に実施される。超音波で確認し、試験穿刺の後に本穿刺を行うが、肺や血管を損傷させてしまうと重要な合併症を起こす可能性がある。そこで、試験穿刺と本穿刺での針先のズレがどの程度認められるのかを検討した。

【方法】

穿刺くん1号を使用し、検者に2回穿刺(試験穿刺、本穿刺)する。

Fig.1 穿刺くん1号

分度器(笑)で針の角度を横軸方向(x軸)、縦軸方向(y軸)に分けて測定する。

Fig.2 穿刺くん1号(背面)

それをもとに針を2cm穿刺した際の針先と中心との距離、試験穿刺と本穿刺の針先の距離を計算する(Fig.3)。

Fig.3 穿刺時の穿刺くん1号を横から見た模式図

(中心からの距離)=√((2cm×sin[x軸角度])2+(2cm×sin[y軸角度])2)

【結果】

19名の医師により実施(うち呼吸器内科医が14名、呼吸器外科医が3名、研修医2名)。全員右手で実施し、穿刺の前後で手指消毒を行った。針の角度はx軸の中央値 0.75度(IQR:-1.38-2.00)、y軸の中央値 4.00度(IQR:0.50-6.75)であり、針を2cm穿刺した際の中心から針先までの距離は中央値 0.20cm(IQR:0.11-0.29)であった(Fig.4)。

Fig.4 針を2cm穿刺した際の針先の位置(cm)

試験穿刺と本穿刺で針先がどのくらいの差があるかを検討するために、試験穿刺を中心として本穿刺をプロットした(Fig.5)。中心からの距離は中央値 0.11cm(IQR:0.07-0.14)であった。

Fig. 5 試験穿刺を中心とした際の本穿刺を2cm穿刺した針先の位置(cm)

【考察】

全ての症例で2cm穿刺した際の針先は中心から5mm以内の誤差で穿刺できていた。また試験穿刺と本穿刺の差も概ね3mm以内であった。以上より安全性を確保するためには超音波検査時に1cm以上の上下左右に余裕があるかの確認が重要であると言える。また多くの検者は右上にズレる傾向があるため自分の癖を把握しておく事が重要である。

【Limitation】

分度器は1度単位のメモリしかなく、針の角度の評価に観察者の精度がバイアスとなり得る。また穿刺部分はゴム製だが穿刺後に針が動いてしまったり、穿刺くん1号の本体が不安定であるなど、穿刺くん1号は改良の余地がある。また当研究には穿刺に慣れていない検者も含まれている。

【結語】

なんだかんだ言って盛り上がって楽しかったです。

皆様、よいお年を~www

   

【謝辞】

協力してくれた先生方ありがとうございました。

間質性肺炎診療に役立つ知識

田中先生による論文解説です。クライオと比較したらいいですね。

Impact of Lung Biopsy on Lung Function in Idiopathic Pulmonary Fibrosis

Pierre-Henri Aussedat et. al  Respiration  DOI: 10.1159/000509557

Background

胸腔鏡下外科的肺生検(SLB)は、特発性肺線維症(IPF)の診断を確定するために、10-30%の症例で行われている。

Objective

本研究の目的は、最終的にIPFと診断された患者のSLBの肺機能に対する影響を分析すること。

Methods

専門センターでSLBを受け、多職種議論により最終的にIPFと診断された連続症例の、単一施設における10年以上にわたる後方視的観察研究である。 主要評価項目は、SLB前後の努力肺活量(FVC)の変動。 副次評価項目は、1秒量(FEV1)、全肺気量(TLC)、一酸化炭素拡散能(DLco)の変動、およびSLBに関連する罹患率と死亡率である。

Results

SLBを受けてIPFと診断された118人の患者では術前後に行われた測定で4.8%(p <0.001)のFVCの相対的な減少がみられた。 平均のFVC減少は、平均185日間で156±386 mLであり、363±764 mL /年の低下を示していた。 FEV1、TLC、DLcoもSLB後に有意な減少が観察された。 SLBから30日以内の合併症は、患者の14.4%で発生した。 2人の患者(1.7%)が30日以内に死亡し、そのうちの1人は低肺機能であった。 ベースラインでFVCが50%未満の患者では、1年生存率が有意に不良であった。

Conclusion

最終的にIPFと診断された患者を対象とした今回の対照なしの研究では、SLBの後にFVCが大幅に低下した。これは、文献にみられる治療なしの場合の平均的な低下よりも大きな数値であった。

Summary at a Glance

本研究では、外科的肺生検によって特発性肺線維症と診断された118人の連続した患者の肺機能の変化を評価した。努力肺活量は、生検前の最終の測定から生検後の最初の測定までの平均185日間で156±386 mL減少し、363±764 mL /年の減少を示していた。

コメント

IPFの治験のプラセボ群ではFVCは200ml/年程度減少していますから、この研究で観察された減少はそれを上回っています。今回の対象疾患は慢性の間質性肺疾患で最も予後が厳しいIPFですから、他のILDで同じように減少を促進するかどうかわかりませんが、少なくともIPFと考えられる例ではSLBの適応はより慎重に判断すべきと思われます。

ATS/ERS/ECSMID/IDSA ガイドライン から

感受性検査についてです

肺MAC症ではCLSI推奨に倣ってマクロライドとアミカシンの感受性を調べるように推奨しています(このCLSIのドキュメントは有料で入手しずらいという謎?があります)

日本ではCLSI推奨の検査法は一般的には出来ませんがブロスミックNTMが代用として一般的に使用されており、我々の検討でCAM耐性を調べるのには有用であることが分かっています(Ann Am Thorac Soc. 2017 Jan;14(1):49-56. doi: 10.1513/AnnalsATS.201607-573OC)

しかしAMKのMICが16ug/mlまでしか測定できないという問題があります。現在新しいパネルが開発中です(Liposomal AMKのMICが128となっているのでそこまで対応しているのかが気になる所です)。

M. Kansasiiはこれまで通りキードラッグであるリファンピシンの感受性検査が推奨されています。しかし、日本ではほぼ耐性例がないということで、学会では初期治療前の検査は推奨していません。当院でも10年以上耐性例は経験していません。

M. abscessusなど迅速菌については、新しいガイドラインではマクロライドとアミカシンの感受性検査を推奨しており、マクロライドは誘導耐性を確認するために14日間の延長培養を行う必要があります。日本ではブロスミックRGMが使えるようになりCLSI推奨に準じた検査が可能です。迅速菌、遅速菌によってパネルを分ける点を間違いないようにしましょう(以前も書きましたが、迅速菌に間違ってBrothMIC NTMを行っていないか確認をしましょう)。

昔の複十字病院全景

①から続く廊下を自転車で移動したそうです。茨城東病院(旧晴嵐荘)には、現在も「シベリア街道」と名付けられた廊下があります。NSコールがあるとそこを走っていきますが、暖房もなく冬は極寒です。懐かしい。

下は1つの病棟の写真と思います。病棟名が「朝日新聞社委託病棟」とあるのが驚きます。また、「秩父宮記念病棟」が建てられた、とあり、今と違った予防会のイメージができますね。

MDDの会をWEBと現地のハイブリッドで開催しました

以下、主催した田中先生コメント

22日に当院でMDDの会が行われました。
初のweb開催でしたが、病理 武村先生、画像 黒崎先生、臨床 田中で
換気良好で寒い中、熱い議論が交わされました。

当院以外に山手メディカルセンター、JR東京総合病院から症例提示していただき盛り上がりました(その他日赤からも参加あり)

症例は、1例目 線維化性HP、2例目 喫煙関連/HP疑い、3例目 PPFE でした。

初めてのWeb開催でしたが大きな支障なく終えることができてホッとしました。

⤴ WEB参加者もいるので、現地はいつもより人数少ないです。

このような症例検討を企業サポートで行うことは出来ませんので、WEBで着実に実績を重ねていくことが重要と思っています。参加希望の施設がありましたらご連絡ください。

吉山先生による、Nature Medicine論文の紹介です。

結核感染者を同定しても、通常の接触者ではその後の発病のリスクは10%前後といわれています。発病のリスクが高くなければ潜在結核感染治療の有害事象を正当化しませんしDOTSも甘くなりがちです。よって、発病のリスクをより豊富な情報をもとに、個々の方についてその後の発病のリスクを予測する計算式を開発することが必要となる。本研究では22個のコホート研究、8万症例うち発病者826例について発病リスク因子毎の発病者割合を計算し、そこから、発病リスク因子と毎に発病リスクを推定する計算式を作成し、その計算式が実際の発病に会うかどうかを検証した。
潜在結核感染治療をしていない場合、IGRA陽性など感染者での2年間の発病リスクは、4%で潜在結核感染治療をしている場合の0.7%、非感染者では0.2%。潜在結核感染していない感染者のうち小児接触者 14.6%、成人接触者3.7%、移民4.1%、免疫抑制ゆえに調べられたもの2.4%であった。5年まで伸ばすと発病リスク若干上がるが、最初の2年間が発病しやすい。さらに、IGRAでは値、接触者では感染源の塗抹、HIV陽性者との接触の有無などをもとに作成した計算式をソフトとして、http://periskope.org/ で公開し、これに入力することによって個々のハイリスク者の発病のリスクを予測した。メタ解析の重みづけにおいて、ランダム効果モデルを用いて行い、予測式の正確さを推定するC統計量は 0.77 (0.70–0.83)で有効なものと思われた。

ソフトを使ってみると、予想したよりも低く出ますが、LTBI治療の重要性は変わりません。

下のFigureは直接は関係ありませんが、勉強になりますので添付しておきます。

見逃した方々へ

荒井先生の素晴らしい写真を共有しますー

土星の輪と木星の縞模様まで!

盛り上がってましたが私は眼が悪いので正しい方角みても分からなかっただろうという、、