びまんカンファレンス(主にIP)はセンター長の田中医師が中心となり、月2回、症例検討、相談に加えて抄読会を行っています(IPは毎週の新患カンファレンスでも必ず提示されます)。
いやー。この結果は驚きでした。肺高血圧だけに効いていたのか、他の3型肺高血圧ではどうなのか、OSはどうなのか、など気になることがいっぱいです。
Inhaled Treprostinil in Pulmonary Hypertension Due to Interstitial Lung Disease
Waxman A. et al. NEJM DOI: 10.1056/NEJMoa2008470
Background
現在、間質性肺疾患の患者の肺高血圧症の治療に認可されている治療法はない。この患者に対する吸入トレプロスチニルの安全性と有効性はわかっていない。
Methods
間質性肺疾患かつ肺高血圧症(右心カテーテルで確認)の患者を、16週間の多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験に登録した。 患者は、吸入トレプロスチニル、またはプラセボに1:1で割りつけられ、吸入トレプロスチニルは1日4回最大12吸入(合計72μg)で超音波パルスデリバリーネブライザーを使用して投与された。 有効性の主要評価項目は、ベースラインから16週までのピーク6分間歩行距離の変化の2群間の差。副次評価項目には、16週目のN末端プロB型ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)の変化と臨床的悪化までの時間を含めた。
Results
合計326人の患者が無作為化を受け、163人が吸入トレプロスチニルに、163人がプラセボに割りつけられた。 患者背景は2群で類似していた。 16週目で、6分間歩行距離のベースラインからの変化におけるトレプロスチニル群とプラセボ群の最小二乗平均差は31.12 mでした(95%信頼区間 [CI]、16.85-45.39 ; P <0.001)。NT-proBNPレベルはプラセボ群でベースラインから46%の増加、吸入トレプロスチニル群で15%の減少がみられた(treatment ratio 0.58; 95%CI、0.47-0.72 ; P <0.001)。 臨床的悪化は、トレプロスチニル群で37人の患者(22.7%)で発生したのに対し、プラセボ群では54人の患者(33.1%)で発生した(ハザード比0.61; 95%CI 0.40-0.92 ; log-rank検定によるP = 0.04) )。 報告された有害事象で多かったものは、咳嗽、頭痛、呼吸困難、 めまい、悪心、倦怠感、下痢であった。
Conclusion
間質性肺疾患による肺高血圧症の患者で、吸入トレプロスチニルは、プラセボと比較して、6分間歩行試験で評価した運動能力をベースラインから改善した。
(Funded by United Therapeutics; INCREASE ClinicalTrials.gov number, NCT02630316.)
コメント
肺疾患による肺高血圧(3群肺高血圧)は難治性病態で、有効な薬物療法はありませんでした。この規模の研究で主要評価項目を達成した本試験は画期的といえるでしょう。しかし日本ではトレプロスニルの吸入薬は現在市販されていません。