肺MAC症に対するALIS併用レジメの有効性 ― ARISE試験の結果です。Ann ATSにアクセプトされました。

RFPに代わる薬剤の探索が続きます。PROのOCをはじめて達成しましたが、将来の他の薬剤開発にも影響することを意識する必要があります。

MACの治験デザインに関してCONVERT、INS-312、ARISEなど、かなり練られていることは理解いただけると思います。

ARISE試験は、新規または再発の非空洞性MAC肺疾患患者を対象に、標準治療(アジスロマイシン+エタンブトール)へ吸入リポソーマルアミカシン(ALIS)を追加する意義を検討した国際無作為化比較試験です。6か月時点および治療終了1か月後において、ALIS併用群は対照群より高い喀痰培養陰性化率を示し、陰性化までの期間も短い傾向を示しました。また、培養陰性化とQOL-B呼吸器ドメインの改善には正の相関が認められた。新たな安全性シグナルは確認されず、新規肺MAC症における早期治療戦略としてALIS併用の可能性を示す結果といえます。

注:このARISE試験はPRO指標を決めることが目的であり、メイン試験であるENCORE結果により1stラインで使用できるかが判断されることになります。

本邦の線毛機能不全症候群の約半数を占めるDRC1変異症例の臨床的特徴を検討した 多施設共同研究の成果が Respiratory Investigation に掲載 されました

PCDの診断体制構築に取り組む中で、初期に報告した日本特有の変異の特徴を、多施設共同研究という形で改めて報告できたことは、非常に感慨深いものがあります。

伊藤先生が筆頭です。

本研究は、本邦の原発性線毛機能不全症候群(PCD)の約半数を占める DRC1遺伝子変異(exon1–4欠失) 症例の臨床的特徴と重症度を明らかにすることを目的とした、多施設後ろ向きコホート研究である。全国12施設からDRC1変異43例を集積し、外側ダイニン腕欠損例と比較した。DRC1変異例では内臓逆位を欠きPICADARスコアが低い一方、画像所見や臨床像は典型的PCDと概ね一致していた。肺機能および画像重症度は年齢とともに悪化し、特に Pseudomonas aeruginosa 感染例で重症度が高かった。DRC1関連PCDは進行性であり、早期診断と早期介入の重要性が示唆された。

HOT導入された気管支拡張症についての解析結果がMrespiratory Medicineにpublishされました。

リハビリ科との共同研究で大野先生、伊藤先生が筆頭です。

本研究では、長期酸素療法(LTOT)を導入した気管支拡張症患者の予後を、COPDや間質性肺疾患と比較検討しました。その結果、気管支拡張症患者の予後はCOPDより有意に不良で、間質性肺疾患と同程度に厳しいことが明らかになりました。特に非結核性抗酸菌(NTM)培養陽性例ではその重症度の高さが示唆されました。LTOT導入時にはすでに病状が進行している可能性があり、早期介入や酸素療法以外の治療戦略の検討が重要であることを示しています。

抗炎症を目的とした気管支拡張症治療の有効性に関するsystematic reviewおよびnetwork meta-analysisの結果がCHESTにpublishされました。

山本先生が筆頭です。2025ATSの時にお会いしてスタートしたプロジェクトでした。

非嚢胞性気管支拡張症(NCFB)の成人患者を対象とした31件の試験(計4,092人)に基づくネットワークメタ解析の報告になります。分析の結果、マクロライド系抗菌薬とDPP-1阻害薬がプラセボに比べ、全体の増悪頻度を有意に減少させることが明らかになりました。特にDPP-1阻害薬は重症の増悪も抑制し、マクロライド治療の併用に関わらず一貫した効果を示しました。マクロライドの中ではアジスロマイシンが最も高い抑制効果を示しています。一方、吸入ステロイドやスタチン等では明確な効果は確認されず、副作用は全般に軽微でした。本研究は、増悪を繰り返す患者への有力な治療選択肢としてこれら二剤を支持した結果となります。

今後RWDの報告が期待されます。

ASPEN 試験の日本人サブ解析の結果が、Respiratory Investigationにpublishされました。

このたび、非嚢胞性線維症性気管支拡張症に対する新規治療薬 brensocatib の有効性と安全性について、日本人患者を対象に検討した ASPEN試験のサブ解析結果を報告しました。

本研究では、国際共同第3相試験である ASPEN trial に参加した日本人患者を対象に、brensocatib が増悪頻度を低減し得るか、また安全に使用可能かを詳細に解析しています。日本人患者における治療効果や副作用プロファイルを明らかにすることで、今後の国内診療への適用可能性を検討する重要なデータとなりました。

本解析の結果、日本人 non-CF 気管支拡張症患者においても増悪抑制効果と概ね許容可能な安全性が確認されました本論文では、日本人患者に特有の背景や臨床的特徴も踏まえて考察しています。

気管支拡張症診療に携わる先生方に、ぜひご一読いただければ幸いです。

児玉先生筆頭の論文「Clinical outcomes of linezolid-related adverse events in patients with multidrug-resistant TB」がIJTLDにpublishされました。

【最新論文紹介】多剤耐性結核治療の鍵「リネゾリド」の副作用とどう向き合うか?


多剤耐性結核(MDR-TB)の治療において、リネゾリド(LZD)は非常に効果が高く、欠かせない薬剤の一つです。しかし、その一方で副作用の頻度が高いことも知られており、長期的な使用を制限する要因となっています。
児玉先生は、日本国内の多施設(複十字病院を含む8施設)において、リネゾリドによる副作用が生じた多剤耐性結核患者81名を対象に、その後の経過を調査しました。
1. 主な副作用と回復の状況
調査の結果、特に多く見られた副作用は以下の3つでした。
• 末梢神経障害(足のしびれなど):58%
• 血液毒性(貧血や白血球減少など):53%
• 視神経障害(視力低下など):14%(11名)
ここで重要なのは、発現した副作用が「回復するかどうか」です。血液毒性については、リネゾリドの中止や減量によって、ほとんどの患者で改善が見られました。しかし、神経障害については深刻な結果が明らかになりました。
2. 「しびれ」や「視力低下」は残るリスクがある
研究によれば、LZDを中止してから1年が経過しても、末梢神経障害を訴えた患者45%(20/44名)が改善せず(LZD中止時と自覚症状が変わらない)、視神経障害でも18%(2/11名)が改善しなかったことが報告されています。
3. 副作用を長引かせないためのポイント
この論文では、末梢神経症状が残ってしまうリスク要因として以下の2点を挙げています。
• 神経症状が出現してからLZDを中止するまでの期間が長いこと
• 神経症状が出現してからLZDを中止するまでの総投与量が多いこと
つまり、神経障害の兆候が現れた場合には、「早期に発見し、速やかに投与を中止すること」が、後遺症を長引かせないために重要であると結論付けられています。
4. 再投与の可能性について
副作用で一度LZDを中止した後に、減量再開(600mgから300mgに減量)するケースについても検討しており、血液毒性や肝機能障害の場合は、減量して再開することで治療を完遂できる可能性があります。しかしながら、末梢神経障害の場合は、減量再開しても症状が悪化し中止せざるを得ないケースが多い(60%)ことも示されました。

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多剤耐性結核の治療は長期にわたりますが、児玉先生と吉山センター長らのこの研究は、「LZDの治療効果と、有害事象が患者QOLに及ぼす影響のバランスを考慮した治療方針」を考慮する上で重要な研究と思われます。
当院では、この最新の知見を日々の診療に活かし、結核やNTMに悩む患者さんへより安全で最適な治療を提供できるよう努めてまいります。
論文情報 Title: Clinical outcomes of linezolid-related adverse events in patients with multidrug-resistant TB Authors: T. Kodama, T. Yoshiyama, et al. Journal: International Journal of Tuberculosis and Lung Disease (2025)