ガイドライン治療抵抗性のNTM症管理に関係するシステマティックレビューがPulmonologyに掲載されました。

結論としては、「現時点では標準的な治療法はなく、患者ごとに病状や菌の特徴を考えた個別化治療が重要とされています」というもので、これが、ERJに掲載されたコンセンサスステートメントに繋がっています(掲載の順番がなぜか逆になってしまいました)

Pulmonology. 2026 Dec;32(1):2632467. doi: 10.1080/25310429.2026.2632467.

難治性NTM肺疾患の治療はどう考えるべきか?(研究レビューのまとめ)

非結核性抗酸菌症(NTM肺疾患)の中には、ガイドラインに沿った治療を行っても改善しない「難治例」があります。しかし、そのような患者さんに対する治療法はまだ限られており、臨床現場では対応に苦慮することが多いのが現状です。そこで本研究では、難治性NTM肺疾患の治療戦略について既存の研究を体系的に整理しました。

研究の概要

2024年1月までに報告されたNTM肺疾患の治療失敗に関する研究を調べ、治療がうまくいかない要因、治療強化の方法、サポート療法などを検討しました。最終的に25本の研究が対象となり、多くはMAC(Mycobacterium avium complex)やM. abscessusによる肺疾患に関するものでした。

主なポイント

治療を強化したり変更する前に、生活の質(QOL)への影響や耐性菌の出現、菌種の変化を評価することが重要。重度の画像所見やこれまでの治療変更回数が多い患者では、治療成功率が低い傾向。栄養指導、呼吸リハビリ、心理的サポートなどの包括的ケアの有効性はまだ十分に検証されていない。間欠的な静脈抗菌薬は症状コントロールに役立つ可能性。菌種によっては追加抗菌薬による治療強化が試みられているが、エビデンスはまだ限定的。局所病変に対する外科切除は選択肢になり得るが、術前に培養陽性の場合は再発リスクが高い。新しい治療法も研究段階にある。

まとめ

難治性NTM肺疾患の治療は非常に複雑で、標準化された確立した治療法はまだありません。
そのため、臨床症状、菌学的情報、画像所見を総合的に評価し、患者ごとに治療を個別化することが重要と考えられます。また、新しい治療法の開発やエビデンスの蓄積が今後の課題です。

一言まとめ

難治性NTM肺疾患では、治療強化だけでなくQOL評価や包括的サポートを含めた個別化医療が重要。

アミカシン点滴治療における薬剤濃度の影響を検討した研究結果がRespiratoryMedicineに掲載されました。

明治薬科大学の渡辺先生(花田研究室)との共同研究結果です。

我々は現行レジメの最適化をメインの研究テーマにしています。

非結核性抗酸菌症(肺NTM症)の治療において、アミカシン(amikacin:AMK)は重症例や難治例で重要な薬剤です。AMKは治療薬物モニタリング(therapeutic drug monitoring : TDM)対象薬であることから、ガイドラインにおいてもピーク濃度(連日投与では35–45 mg/L, 間欠投与では65–80 mg/L)とトラフ濃度の目標値が設定されています。しかし、この目標値の根拠となったのは2004年にClin Infect Disに報告された論文で、連日投与で15 mg/kg及び間欠投与で25 mg/kgのAMKを使用した際の血中濃度を報告したに過ぎず、本文中でも“有効性の比較は研究デザイン上実施していない”と明記されています。従って重要なのは、AMKのTDM目標値は治療効果を担保するエビデンスに裏打ちされたものではないと言う事です。

ではここでAMKのResearch Gapsを整理してみると、下記2点が挙げられます。

  • アミノグリコシド系抗菌薬はCpeak/MICに治療効果が相関するといわれているが、肺NTM症でピーク濃度と効果との関連を比較した論文が報告されていない
  • AMKの耳毒性(聴覚障害)はAMKの累積曝露量がリスク因子として知られているが、実際にどの程度の累積曝露量があると、耳毒性が出やすいのか分かっていない

そこで本研究では、AMKを含む治療を受けた肺NTM症患者を対象に後ろ向き観察研究を実施し、

  • AMKの血中濃度と治療効果(培養陰性化)との関連性
  • AMKの累積曝露量(cumulative AUC : cAUC)と耳毒性との関連性

を評価しました。

1. 治療効果について

治療効果が評価できた171例中93例(54%)でAMK導入後に培養陰性化を達成しました。予測因子の解析において、AMKの血中濃度(ピーク・トラフ濃度、AUC、Cpeak/MICなど)は陰性化と関連していませんでした。一般的にアミノグリコシド系抗菌薬は濃度依存的な殺菌効果があるとされており、Cpeak/MICに治療効果が相関するといわれていましたが、本研究ではその傾向は全く観察されませんでした。

近年の報告では、M. abscessusを対象としたin vitro研究において、AMKは時間依存的な殺菌効果を示し、Cpeak/MIC > 2で効果が頭打ちになることが示唆されていることを併せて考えると、肺NTM症治療において、Cpeakを無理に上げる必要性は高くないと考えられます。

2. 耳毒性について

耳毒性については、AMKのcAUCと非常にきれいに相関しました。そこでcAUCと耳毒性の関連を数理モデル解析により解析したところ、任意のピーク・トラフ濃度の組み合わせにおいて耳毒性が発現しやすい凡その期間を推定することが可能になりました。例えばピーク濃度が30 mg/Lでトラフ濃度が0.8 mg/Lとなるように連日治療すると、約21週で10%の患者さんに耳毒性が生じることが分かります。この関係性は今後AMKによる治療において耳毒性をコントロールするために足掛かりになることが期待されます。

重要な点として、本研究で示されたのはAMKの「至適投与量」や「推奨投与量」ではないという点です。本研究では、AMKは「多ければ多いほど効く」という単純な関係は成り立たない事が実臨床データから裏付けられました。一方で、どの程度のAMK累積量で耳毒性に注意する必要があるかを定量的に示した点が有益な点と考えています。

本研究は、ALIS(吸入アミカシン)を含む新たな治療選択肢が広がる中でも、注射用アミカシンを安全に、かつ合理的に使用するための足掛かりとして、今後のNTM診療において重要な意味を持つと考えられます。

NTM/気管支拡張症をテーマにしたワークショップおよびNTM症に関するシンポジウムがBangkokで開催されました。

前者はサテライトで後者はAPRCという学会内でのシンポジウムです。

タイは結核罹患率140を超えており、日本の1960年後半あたりでしょうか。現時点でNTMやBE診療の戦略を定めていくことはとても重要だと感じました。韓国の経験は参考にでき、awarenessと若手教育が最も重要だと思いますが、システムを変えるには、結核分野でやるべき事が多く容易ではない部分も理解できました。

私はこちらのワークショップでは、日本における治療戦略の発展と、気管支拡張症の現状をお話しし、翌日のシンポジウムでは、疫学、環境、診断までを話しました。色々勉強になりました。

児玉先生:今後のMDR-TBなどの診療を担う若手Drです(薬剤耐性など専門にしておりNTM症にも取り組んでいます)

貴重な機会を与えてくださり感謝しております。

抗酸菌関連の研究会で藤原先生、大江先生、大野先生が講演しました。

抗治研と呼ばれる歴史ある会で既に56回目。

毎年11月末から12月はじめの寒い時期に開催されるのですが、今回は予定が変更され2月に(もっと寒い笑)

大野先生は最近Respiratory Medicineに掲載された研究内容

大江先生はメインのテーマにしているnatural coureseやwatchful waitingについての報告を

藤原先生はランチョンで外科適応例なども含めての講演でした。

肺MAC症に対するALIS併用レジメの有効性 ― ARISE試験の結果です。Ann ATSにアクセプトされました。

RFPに代わる薬剤の探索が続きます。PROのOCをはじめて達成しましたが、将来の他の薬剤開発にも影響することを意識する必要があります。

MACの治験デザインに関してCONVERT、INS-312、ARISEなど、かなり練られていることは理解いただけると思います。

ARISE試験は、新規または再発の非空洞性MAC肺疾患患者を対象に、標準治療(アジスロマイシン+エタンブトール)へ吸入リポソーマルアミカシン(ALIS)を追加する意義を検討した国際無作為化比較試験です。6か月時点および治療終了1か月後において、ALIS併用群は対照群より高い喀痰培養陰性化率を示し、陰性化までの期間も短い傾向を示しました。また、培養陰性化とQOL-B呼吸器ドメインの改善には正の相関が認められた。新たな安全性シグナルは確認されず、新規肺MAC症における早期治療戦略としてALIS併用の可能性を示す結果といえます。

注:このARISE試験はPRO指標を決めることが目的であり、メイン試験であるENCORE結果により1stラインで使用できるかが判断されることになります。

本邦の線毛機能不全症候群の約半数を占めるDRC1変異症例の臨床的特徴を検討した 多施設共同研究の成果が Respiratory Investigation に掲載 されました

PCDの診断体制構築に取り組む中で、初期に報告した日本特有の変異の特徴を、多施設共同研究という形で改めて報告できたことは、非常に感慨深いものがあります。

伊藤先生が筆頭です。

本研究は、本邦の原発性線毛機能不全症候群(PCD)の約半数を占める DRC1遺伝子変異(exon1–4欠失) 症例の臨床的特徴と重症度を明らかにすることを目的とした、多施設後ろ向きコホート研究である。全国12施設からDRC1変異43例を集積し、外側ダイニン腕欠損例と比較した。DRC1変異例では内臓逆位を欠きPICADARスコアが低い一方、画像所見や臨床像は典型的PCDと概ね一致していた。肺機能および画像重症度は年齢とともに悪化し、特に Pseudomonas aeruginosa 感染例で重症度が高かった。DRC1関連PCDは進行性であり、早期診断と早期介入の重要性が示唆された。

HOT導入された気管支拡張症についての解析結果がMrespiratory Medicineにpublishされました。

リハビリ科との共同研究で大野先生、伊藤先生が筆頭です。

本研究では、長期酸素療法(LTOT)を導入した気管支拡張症患者の予後を、COPDや間質性肺疾患と比較検討しました。その結果、気管支拡張症患者の予後はCOPDより有意に不良で、間質性肺疾患と同程度に厳しいことが明らかになりました。特に非結核性抗酸菌(NTM)培養陽性例ではその重症度の高さが示唆されました。LTOT導入時にはすでに病状が進行している可能性があり、早期介入や酸素療法以外の治療戦略の検討が重要であることを示しています。

抗炎症を目的とした気管支拡張症治療の有効性に関するsystematic reviewおよびnetwork meta-analysisの結果がCHESTにpublishされました。

山本先生が筆頭です。2025ATSの時にお会いしてスタートしたプロジェクトでした。

非嚢胞性気管支拡張症(NCFB)の成人患者を対象とした31件の試験(計4,092人)に基づくネットワークメタ解析の報告になります。分析の結果、マクロライド系抗菌薬とDPP-1阻害薬がプラセボに比べ、全体の増悪頻度を有意に減少させることが明らかになりました。特にDPP-1阻害薬は重症の増悪も抑制し、マクロライド治療の併用に関わらず一貫した効果を示しました。マクロライドの中ではアジスロマイシンが最も高い抑制効果を示しています。一方、吸入ステロイドやスタチン等では明確な効果は確認されず、副作用は全般に軽微でした。本研究は、増悪を繰り返す患者への有力な治療選択肢としてこれら二剤を支持した結果となります。

今後RWDの報告が期待されます。