DOI: 10.1016/j.rmed.2023.107417
先日Respiratory Medicineにpublishされました、論文の紹介になります。
肺NTM症の経過中には緑膿菌や黄色ブドウ球菌などの一般細菌が検出されることがしばしばあります。しかし、一般細菌の検出が肺NTM症の経過に与える影響については、少数の報告にとどまっています。
今回私たちは、診断時に一般細菌が複数回検出された肺MAC症の患者背景と臨床経過の検討を行いました。
一般細菌が検出された群では、より強い気管支拡張像を認めましたが、MACの自然培養陰性化率は高く(19% vs. 7%, p=0.044)、MACの治療導入率は低い(41% vs. 68%, p=0.003)という結果でした。一方で、気管支拡張症の増悪頻度は高く(21% vs. 7%, p=0.015)、咳や痰などの症状は強い傾向にありました。
つまり、診断時に一般細菌が定着している肺MAC症においては、MACで難渋する症例の頻度は低く、気管支拡張症としてのマネージメントを必要とするケースが多いという結果でした。
考察——————————–
肺NTM症の中には、先行する気管支拡張症にNTMが感染するケース(気管支拡張症メインの症例)や、NTMの病勢により気管支拡張が進行しているケース(NTMメインの症例)など様々です。例えばNTMの診断基準を満たしたとしても、背景に線毛機能不全症候群などによる気管支拡張症が隠れているケースも経験しますので、注意が必要です。
さらに、今回の結果から、咳痰などの症状に与える影響はNTMよりも緑膿菌やS. aureusの方が強いことがわかりました。
患者さんが湿性咳嗽を訴える場合には、NTMの悪化だけでなく、気管支拡張症増悪も考慮する必要があります。気管支拡張症増悪であれば、1-2週間の抗菌薬治療で症状が改善することが多いです。症状の悪化だけで、安易にNTM治療を導入することは避けなければなりません。
今回の研究結果から、一般細菌の有無がNTM患者さんのキャラクターを見分ける1つの指標になることがわかりました。しかし、一般細菌の有無に関わらず、湿性咳嗽を有するようなNTMの患者さんに対しては、早期から気管支拡張症としてのマネージメントを行なっていくことが重要かと思います。
気管支拡張症のマネージメントというと、マクロライド長期療法をイメージする方が多いかと思います。しかし、マクロライド長期療法はあくまで増悪歴を有する症例に対して推奨されている治療です。気管支拡張症のマネージメントとして、まずはじめに行うべきは、自己排痰法を含めた理学療法とされています。
当院では自己排痰法を指導するためのパンフレットも動画付きで作成しておりますので、是非ご活用ください。 (fe4f8630c8f8b1a82e427f855a07191a.pdf (fukujuji.org)