AAC にpublish された、「Pharmacokinetics and Adverse Effects of Clofazimine in the Treatment of Pulmonary Non-Tuberculous Mycobacterial Infection」の解説です。
クロファジミンの薬物動態と副作用について
【背景・目的】
クロファジミンはハンセン病治療薬として古くから使用されてきましたが、2021年9月より、多剤耐性結核及びMycobacterium abscessus症に対して保険審査上認可されることになりました。本剤を使用する上では色素過剰沈着や、QTc延長症候群などの副作用に注意して使う必要がありますが、本剤の薬物動態/薬力学(PK/PD)に関する情報はほとんど無く、副作用を未然に防ぐことが出来ません。
そこで本研究では、まずクロファジミンのPKを正確に解析し、更にクロファジミンの血中濃度と副作用との関連を調査しました。
【方法】
複十字病院に入院又は外来治療中でインフォームドコンセントが得られた肺非結核性抗酸菌症患者45例を対象とし、前向き観察研究を実施しました(UMIN000041053)。主要評価項目はクロファジミンによる有害事象とし、原因暴露の指標としてクロファジミンの血清中濃度を使用しています。今回有害事象としては色素過剰沈着の程度と、QTC間隔のベースラインからの変化量としています。
クロファジミンの血中濃度測定は、1人あたり2~5点をトラフ付近で行いました。通常の生化学用検査の血清の残渣を濃度測定に活用したため侵襲性はありません。後ほど後述しますが、クロファジミンは半減期が非常に長い薬であるため、トラフのみの採血で問題なくPKを解析することが出来ます。
測定されたクロファジミンの血中濃度は母集団薬物動態解析法と呼ばれる手法により解析し、患者毎に定常状態(血中薬物濃度と組織中薬物濃度が平衡関係になる状態)のクロファジミン濃度を推定しました。この定常状態の血中濃度と、副作用との関連を調べています。
この研究は複十字病院と明治薬科大学の倫理承認を経て実施しています。
【結果】
今回組み入れられた患者さんは45例おり、そのうち43例は50mg/day、2例は100mg/dayのCFZを含むレジメンで治療されました。菌株としてはM. aviumが23例、M. intracellulareが3例、M. abscessusが13例、M. massilienseが6例でした。
まず血中濃度解析の結果、クロファジミンの半減期は36日であることが判明しました。半減期が長いということは、薬が蓄積しやすい事を示します。この事を図示したものが図1になります。

図1:こちらは縦軸がクロファジミンの血清中濃度で、横軸が投与開始からの経過日数です。
黒点:CFZ実測値、黒線:患者毎の実測値を結んだ直線
赤線:model予測の平均値、グレーゾーン:model予測の50%区間、黒点線:model予測の95%区間
図1を見るとクロファジミンは毎日投与していると血中濃度がゆっくり上昇し、定常状態に到達するまで144日も必要であることが初めて示されました。この定常状態の血中濃度は患者さん毎に固有の値を示しますので、これを副作用の解析に用いました。
しかし予想に反しクロファジミンの血中濃度と、色素過剰沈着の程度には関連性はない結果となりました(図2)。なおPigmentation1群は色素過剰沈着無し(3例)及び軽度(23例)を含めており、Pigmentation2群は色素過剰沈着中等度(14例)を示します。

図2:こちらは縦軸がクロファジミンの定常状態の血中濃度で、色素過剰沈着の程度毎にt検定を行っています。
次に血中濃度とQTc間隔のベースラインからの変化量を見てみます(図3)。こちらは、相関係数は0.35でしたが統計的有意に相関していました(P値<0.001)。

図3:こちらは縦軸がQTc間隔のベースラインからの変化量、横軸がクロファジミンの累積の曝露量を示しています。なお血清カリウム値が低いほど丸が大きくなり、心電図が測定されたタイミングでマクロライド系抗菌薬を服用していた場合は赤又は青で着色しています。
【考察】
クロファジミンの薬物動態を、定常状態までしっかりモニターした報告はこれが初めてです。本研究ではクロファジミンの半減期は36日と推定されたため、体内から薬が消失するのに半年程度必要であることが示されました。従ってクロファジミンの副作用は薬剤中止後もしばらく継続する可能性がありますので、本剤の副作用モニタリングは密に行った方が良いと考えられます。
本研究ではクロファジミンの薬物濃度と色素過剰沈着との関連性は示されませんでしたが、クロファジミンの色素過剰沈着は皮下脂肪の量と関連している可能性を示唆した報告があります。本研究における追加検討においても色素過剰沈着の程度とBMIの間には統計的有意差はありませんでしたが(P=0.13)、血中濃度より関連性が高いと考えられました。以上より、クロファジミンの色素過剰沈着は皮下脂肪がある程度あれば回避不能である可能性が示唆されました。
最後にクロファジミンの血中濃度とQTc間隔には有意な相関関係がありました。それでも本研究コホートではTorsades de pointesを発症した患者はおらず、QTc間隔のベースラインからの増加量も平均±SDで23.1±16.9 mSecと限定的でした。本研究では大多数が50mg/dayという用量を投与されていましたので、100mg/dayの投与量ではどうか、現在検討しております。













